術後に麻痺性イレウスになる原因とは?治療薬で症状は即緩和されるのか?
腸の内容物が通過障害を起こすイレウス。通過障害を起こす原因が、腸の蠕動運動の異常によるのが、機能的イレウスです。機能的イレウスの中で、腸管の動きが鈍くなり、腸の内容物が肛門側へ移動できなくなるのが、麻痺性イレウスです。
麻痺性イレウスは術後イレウスの一種
腸蠕動音が5分以上確認できない時、麻痺性イレウスが疑われます。正常ならば、腸蠕動音は、5秒から15秒に1回聞こえます。聴診して、5分以上蠕動音が確認できない時、腸の蠕動運動は、停止していると考えられます。
腸の蠕動運動が停止する原因には、腹膜や腹腔の炎症、電解質の異常、医薬品の影響などがあげられます。腸管の蠕動運動を抑制する作用を持つ薬としては、腸管に直接障害を引き起こす薬と、自律神経を介して腸管の蠕動運動を抑制する薬があります。麻酔も、腸管の運動を抑制する薬の一種です。
開腹手術では、麻酔によって消化管の運動を一時的に止めます。麻酔から覚め、消化管の運動が回復するのは、術後、胃が3~4時間、小腸が5~7時間、右側結腸が24~47時間、左側結腸が51~59時間とされています。術後72時間を過ぎても腸蠕動運動が消失している場合、術後イレウスが疑われます。術後イレウスのうち、麻酔の副作用などが原因となって腸管の動きが戻らないものを、麻痺性イレウスと呼びます。
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扱いに注意したい腸管運動改善薬
麻痺性イレウスは、医薬品によっても引き起こされるのが、特徴です。治療は、腸の蠕動運動を停止する原因になったと疑われる薬の使用を中断することから始まります。
麻痺性イレウスを引き起こすとされる医薬品の使用を中断するとともに、絶飲、絶食で輸液が始まります。軽度なら、これで完治します。重度の場合は、イレウス管で腸管の閉塞部を拡張します。
また、腸管運動改善薬を投与することがあります。腸管運動改善薬として使われるのは、パントテン酸製剤、プロスタグランジンF2α製剤、ワゴスチグミンなどです。腸管運動改善薬は有効であることが、多いとされます。
ただし、重篤な病態では、腸管穿孔を誘発する危険性があります。投与にあたっては、注意が必要です。腸管運動改善薬は、麻痺性イレウスの治療で常に使われるわけではありません。
→イレウス管の排液色!正常な際の量と色は?異常の場合は排液が減少する?
今回のまとめ
麻痺性イレウスは、腸の蠕動運動の異常が原因で、腸の内容物の通過障害を起こす機能的イレウスの一種です。腸蠕動音が5分以上確認できない時、麻痺性イレウスが疑われます。
麻痺性イレウスは、医薬品によっても引き起こされます。腸管の蠕動運動を抑制する作用を持つ薬の一種に、麻酔があります。麻酔によって止められた消化管の運動は、通常、術後72時間以内に回復します。術後72時間を過ぎても腸蠕動運動が消失している場合、術後イレウスが疑われます。麻痺性イレウスは、術後イレウスの一種です。
麻痺性イレウスの治療は、保存的治療がメインです。輸液やイレウス管で効果が思わしくない時、腸管運動改善薬が投与されます。ただし、重篤な病態では、腸管穿孔を誘発する危険性があるので、投与に際しては、注意が必要です。
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